その節税、意味ありますか?節税の仕組みについて解説!【個人クリニック編】

2025.10.03

 日々の診療でお忙しい中、クリニックの経営も一手に担われている院長先生、本当にお疲れ様です。多くの先生方からご相談をいただく中で、やはり関心が高いテーマが「節税」です。

「利益は出てきたけど、税金が思ったより高くて驚いた…」 「節税したいけど、何から手をつけて良いか分からない」

このようなお悩みをお持ちではないでしょうか?

今回のブログでは、私たち会計事務所の視点から、個人クリニックの先生がまず押さえるべき節税の基本と、将来を見据えた次のステップについて、分かりやすく解説していきます。


個人の税金はどう決まる?節税の基本

まず、個人事業主である院長先生の所得税は、「所得」に対して課税されます。クリニックの所得は、年間の「収入」から「必要経費」を差し引いて計算されます。

所得=収入−必要経費

この「所得」から、後述する「所得控除」を差し引いた金額(課税所得)に、所得税率を掛けて税額が決まります。日本の所得税は「累進課税」といって、所得が多ければ多いほど税率が高くなる仕組みです。

つまり、個人クリニックの節税の基本は、以下の2つに集約されます。

  1. 必要経費を漏れなく計上する
  2. 使える所得控除を最大限に活用する

当たり前のようですが、この2つを徹底するだけでも、納税額は大きく変わってきます。


まずはコレから!個人クリニック節税の3つの必須ポイント

まだ手をつけていないものがあれば、ぜひ検討してみてください。

1. 青色申告の活用【最大の節税策!】

もし、まだ白色申告をされている先生がいらっしゃれば、今すぐ「青色申告」への切り替えを検討してください。青色申告には、税制上の大きなメリットがあります。

  • 青色申告特別控除(最大65万円):所得から無条件で最大65万円を控除できます。税率33%の方なら、約21万円の節税効果です!
  • 青色事業専従者給与:配偶者やご家族に支払った給与を、全額必要経費にできます。(白色申告では上限あり)
  • 赤字の繰り越し:赤字(純損失)を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できます。

手続きは簡単です。所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出するだけ。これだけで得られるメリットは絶大です。

2. 必要経費を漏れなく計上する

「これは経費になるのかな?」と迷う支出はありませんか?事業に関連する支出は、漏れなく経費として計上するのが鉄則です。

  • 家事按分:ご自宅をクリニックと兼用している場合、家賃や水道光熱費、通信費などを事業で使用している割合に応じて経費にできます。
  • 車両関連費:通勤や往診などで使用する車の購入費(減価償却費)、ガソリン代、駐車場代、自動車税なども経費になります。
  • 研修費・書籍代:学会への参加費や交通費、医療関連の書籍代ももちろん経費です。

「これくらい良いか」と諦めずに、日頃から領収書やレシートをきちんと保管し、事業との関連性を説明できる支出は、もれなく計上する習慣をつけましょう。

3. 小規模企業共済・iDeCoへの加入【将来への備えが節税に】

個人事業主は、会社員と違って退職金がありません。「小規模企業共済」は、ご自身で積み立てる“経営者のための退職金制度”です。

最大のメリットは、掛金(月々最大7万円、年額84万円)が全額「所得控除」の対象になること。つまり、将来のための貯蓄をしながら、現在の所得税・住民税を大きく減らすことができるのです。

同様に、iDeCo(個人型確定拠出年金)も掛金が全額所得控除の対象となり、老後資金を準備しながら節税できる非常に有効な手段です。


ちょっと待って!その節税の落とし穴 

良かれと思ってやった節税策が、かえって資金繰りを悪化させるケースもあります。

  • 利益が出たからと焦って高額な医療機器を買う 減価償却費として経費にはなりますが、手元のキャッシュは一気に減ってしまいます。本当にその投資が将来の増収や業務効率化につながるのか、冷静な判断が必要です。(※30万円未満の資産であれば一括で経費にできる特例もあります)
  • 節税目的での不動産投資 不動産所得の赤字を事業所得と相殺(損益通算)する節税スキームですが、空室リスクや修繕費の発生、価格下落など、事業とは別のリスクを抱え込むことになります。安易に手を出すのは危険です。
  • 倒産防止共済など課税所得の繰延効果のある節税を行う 倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、掛金を支払った年度に全額を損金として計上できるため、課税所得を繰り延べる節税効果があります。ただし、将来法人化などの理由で解約すると、それまで支払った掛金が解約返戻金として返還されます。この返戻金は収入(益金)として扱われるため、その時点で課税対象となる点に注意が必要です。

次のステージへ「医療法人化」という選択肢

個人事業主として順調に利益が伸びていくと、累進課税によって税率がどんどん上がっていき、個人の節税策だけでは限界が見えてきます。

一般的に、課税所得が1,500万円を超えてくるあたりから、「医療法人化(法人成り)」を検討することで、トータルの税負担を大きく軽減できる可能性が出てきます。

法人化の主なメリット

  • 院長先生の給与が「給与所得」になり、給与所得控除が使える
  • 法人から役員退職金を受け取ることができ、税制上有利
  • ご家族を役員にして所得を分散できる
  • 社会的信用が高まる

もちろん、社会保険への加入義務や事務負担の増加といったデメリットもあります。ご自身のクリニックの状況に合わせて、法人化すべきかどうかのタイミングを慎重に見極めることが重要です。


まとめ:まずは足元から。そして将来を見据えて。

個人クリニックの節税は、まず「青色申告」「経費計上の徹底」「小規模企業共済」といった、すぐに着手できて効果の高い方法から始めるのが王道です。

そして、事業が成長し、納税額が大きくなってきたと感じたら、それは事業が順調な証拠。その時こそ、「医療法人化」という次のステージを視野に入れる絶好のタイミングです。

私ども会計事務所では、日々の記帳や確定申告のサポートはもちろん、先生方一人ひとりのライフプランやクリニックの将来像をお伺いしながら、最適な節税策、そして法人化のシミュレーションまで、トータルでサポートさせていただいております。

「自院の場合はどうなんだろう?」「一度、専門家の意見を聞いてみたい」と思われたら、ぜひお気軽にご相談ください。