【クリニック・医療法人向け】その設備投資、税負担を大幅に軽減できるかも?「経営力向上計画」による即時償却の活用法と”落とし穴”

2025.10.03

クリニックや医療法人の院長先生、理事長の皆様。日々の診療に加え、最新の医療を提供するための設備投資は、経営における重要な課題かと存じます。 高額な設備を導入した年度は、多額の支出があるにもかかわらず、減価償却により経費にできる金額が限られ、思った以上に税負担が重くなってしまうケースも少なくありません。

そんな時に活用を検討したいのが、**「経営力向上計画」という制度です。認定を受けると、設備の取得価額を全額その年度の経費(即時償却)**にできるため、設備投資年度の税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

しかし、この制度には医療機関が特に注意すべき重要なポイントがあります。本記事では、制度のメリットから、医療機関ならではの注意点、そして具体的な手続きの流れまでを分かりやすく解説します。

1.「経営力向上計画」による即時償却とは?

通常、高額な設備を購入した場合、その取得価額は耐用年数に応じて数年間にわたって少しずつ経費(減価償却費)として計上されます。

一方、経営力向上計画の認定を受けて導入した設備は、取得価額の全額を導入したその年に一括で経費にすることができます。これを「即時償却」と呼びます。

例えば、300万円の器具備品を購入した場合、即時償却を適用すれば、その300万円がまるごと経費となり、課税対象となる所得を大きく圧縮できるため、短期的な節税効果は絶大です。

2.【最重要】医療機関が利用する際の”落とし穴”

非常にメリットの大きい制度ですが、医療保健業を営むクリニックや医療法人には、致命的ともいえる注意点があります。

それは、「医療機器」および「建物附属設備」が制度の対象外であるという点です。

CTやMRI、内視鏡システムといった高額な医療機器を導入しても、この即時償却の制度は利用できません。この点を誤解したまま計画を進めないよう、くれぐれもご注意ください。

3.では、クリニックでは何が対象になるのか?

「医療機器が対象外なら、うちでは使えないのでは?」と思われるかもしれません。 しかし、下記のような医療行為に直接使用しない設備であれば、対象となる可能性があります。

  • 工具器具備品(取得価額30万円以上)
    • 電子カルテや予約システムを稼働させるための高性能なサーバーやPC
    • 待合室や診察室、スタッフルームの空調設備や家具
  • ソフトウェア(取得価額70万円以上)
    • 高機能な会計ソフトや人事労務管理ソフト
  • 機械装置(取得価額160万円以上)
    • 自家発電装置など

「これは医療機器に当たるのか?」といった判断が難しいケースも多いため、設備投資を検討される際は、購入前に専門家へご相談いただくことを強くお勧めします。

4.手続きの流れと期限

この制度を利用するためには、定められた手順と期限を守る必要があります。

  1. 【設備取得〝前”】工業会の証明書を入手 設備メーカー等を通じて、その設備が生産性向上に資するものであることの証明書を必ず取得前に入手します。
  2. 【設備取得後60日以内】経営力向上計画の申請 証明書を添付して、管轄の省庁へ経営力向上計画を申請します。
  3. 【決算日まで】計画の認定を受ける 申請から認定までには通常1ヶ月程度かかります。決算日までに認定されていなければ、その年度での即時償却は認められません。
  4. 【決算日まで】設備の稼働を開始する 減価償却は、設備が実際に稼働して初めて認められます。決算日直前に導入した場合は、試運転の日報や稼働状況の写真など、「決算日までに事業で使い始めた」ことを客観的に証明できる資料を必ず保管しておきましょう。

※その他、中古資産は対象外であること、税額控除との選択適用(併用は不可)であることなど、細かな注意点があります。

【まとめ】

経営力向上計画による即時償却は、うまく活用すればキャッシュフローを大きく改善できる強力な制度です。 しかし、医療機関にとっては対象設備が限られる上、手続きの期限も厳格に定められています。

「この設備は対象になるだろうか?」 「手続きが複雑で、何から手をつけて良いか分からない」

そのようなお悩みをお持ちの院長先生、理事長の皆様、設備投資という重要な経営判断を誤らないためにも、購入を決定される前に、ぜひ一度、税務の専門家である税理士法人大下会計にご相談ください。 制度の適用可否の判断から、煩雑な申請手続きの代行まで、貴院の設備投資と税務を強力にサポートいたします。