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知らないと損!医療機器は購入?リース?減価償却と節税の視点から税理士が解説
2025.10.03
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クリニックや病院を経営される先生方にとって、高額な医療機器の導入は、医療の質を向上させる一方で、経営上の大きな判断が伴う重要な投資です。特に、「購入」と「リース」のどちらを選択するかは、資金繰りや節税戦略に大きな影響を与えます。
「どちらが得か?」この問いにシンプルに答えることはできません。なぜなら、答えはクリニックの経営状況、資金計画、そして将来の展望によって大きく異なるからです。
本記事では、税務の専門家である税理士の視点から、医療機器の「購入」と「リース」それぞれのメリット・デメリットを、減価償却と節税という観点から分かりやすく解説します。この知識があるかないかで、手元に残るキャッシュが大きく変わる可能性もあります。ぜひ最後までお読みいただき、最適な選択をするための一助としてください。
「購入」のメリット・デメリット
まず、自己資金または借入によって医療機器を「購入」するケースを見ていきましょう。
メリット
- 長期的な総コストが割安に 長期間(法定耐用年数を超えて)使用する予定であれば、リースに比べて支払総額が安くなるのが一般的です。
- 資産になる(所有権) 購入した医療機器はクリニックの資産となります。担保価値があるため、将来の資金調達時に有利に働く可能性があります。
- 減価償却による節税効果 購入費用をその年の経費に一度に計上するのではなく、減価償却という手続きを通じて、法定耐用年数にわたって毎年少しずつ経費として計上できます。これにより、長期的に安定した節税効果が期待できます。また定率法を採用すれば、さらに早く減価償却をすることができます。
- 税制優遇措置の活用 新品の医療機器などを購入した場合、「中小企業経営強化税制」などの制度を活用できれば、即時償却(全額を経費計上)や特別償却といった、非常に大きな節税メリットを受けられる可能性があります。
デメリット
- 多額の初期投資が必要 購入時にはまとまった資金が必要となり、自己資金が減少したり、借入金が増加したりすることで、キャッシュフローが悪化する可能性があります。
- 償却資産税の申告が必要 所有している資産として、毎年償却資産税の申告が必要となります。
- 陳腐化のリスク 医療技術の進歩は目覚ましく、数年で旧式化してしまうリスクがあります。
- 管理・廃棄の手間とコスト メンテナンスや修理は自己負担です。また、将来廃棄する際にも費用がかかります。
「リース」のメリット・デメリット
次に、リース会社から医療機器を借りる「リース」のケースです。
メリット
- 初期投資を大幅に抑制 購入に比べて、導入時に必要な資金を大幅に抑えることができます。手元のキャッシュを温存し、他の運転資金に回すことが可能です。
- リース料を全額経費にできる 毎月支払うリース料は、その全額を経費として計上できます。減価償却のような複雑な計算が不要で、会計処理が非常にシンプルです。
- 最新機器への入れ替えが容易 リース期間が終了すれば、新しい契約を結んで最新モデルの医療機器に入れ替えることが容易です。技術革新の速い分野の機器に適しています。
- 管理の手間が少ない 償却資産税の申告は不要です。また、契約内容によってはメンテナンス費用がリース料に含まれている場合もあります。
デメリット
- 支払総額が割高になる リース料には、本体価格に加えて金利や保険料、償却資産税などが含まれているため、購入した場合の総額よりも割高になります。
- 所有権がない あくまで「借り物」であるため、自社の資産にはなりません。リース期間が満了すれば返却する必要があります(契約満了時にリースアップすれば、自社の資産とすることができる)。
- 原則、中途解約ができない リース契約は、基本的に契約期間中の解約が認められません。もし解約する場合は、高額な違約金が発生することがほとんどです。
- 即時償却、特別償却ができない 固定資産として計上しないで、リース料の支払を通じて経費計上するため、固定資産計上を前提として即時償却や特別償却などの税制優遇は受けることができません。
【重要ポイント】減価償却と中古資産の活用
購入を選択した場合の節税戦略で、特に知っておいていただきたいのが「中古資産の活用」です。
減価償却費は、取得価額 ÷ 法定耐用年数 で大まかに計算されます。この「耐用年数」が短いほど、1年あたりに計上できる経費(減価償却費)は大きくなり、短期的な節税効果が高まります。
中古資産は、新品に比べてこの法定耐用年数を短く設定できます。
例:800万円の医療機器(法定耐用年数8年)を導入する場合
- 新品で購入:800万円 ÷ 8年 = 100万円/年 の減価償却費
- 4年落ちの中古を同額で購入:耐用年数が短縮され(※)、例えば4年で償却できる場合、800万円 ÷ 4年 = 200万円/年 の減価償却費
(※簡便法による計算例です。実際の計算は異なります。)
このように、利益が多く出た年に、あえて耐用年数の短い中古資産を購入することで、多額の経費を計上し、その年の税負担を大きく軽減するという戦略が可能です。これは、リースにはない購入ならではの大きなメリットと言えるでしょう。
購入 vs リース 比較まとめ
項目 購入 リース 初期費用 大きい 小さい 支払総額 割安 割高 所有権 あり なし 会計処理 複雑(減価償却) シンプル(全額経費) 償却資産税 かかる かからない 最新機種への対応 しにくい しやすい 短期的な節税 ◎(中古活用・特別償却) 〇(経費計上) 中途解約 自由(売却可能) 原則不可
結論:あなたのクリニックに最適なのはどっち?
結局のところ、どちらを選ぶべきでしょうか。以下のポイントからご自身のクリニックの状況を判断してみてください。
- こんなクリニックは「購入」がおすすめ
- 手元の資金に余裕がある、または有利な条件で融資を受けられる
- その医療機器を長期間(5年以上)使い続けることが確実
- 利益が多く出ており、即時償却や中古資産の活用で大きな節税メリットを享受したい
- 資産を増やして、財務体質を強化したい
- こんなクリニックは「リース」がおすすめ
- 初期投資を抑え、キャッシュフローを安定させたい
- 技術革新が早く、数年で機器を入れ替えたい(CT、MRIなど)
- 減価償却や固定資産税の申告といった事務負担を減らしたい
- 毎月安定した経費を計上し、利益管理をシンプルにしたい
医療機器の導入は、単なる「買い物」ではありません。クリニックの未来を左右する「経営判断」です。今回ご紹介した視点に加えて、利用できる補助金や最新の税制など、考慮すべき点は多岐にわたります。
安易に業者や金融機関の提案だけで決めるのではなく、ぜひ一度、顧問税理士にご相談ください。先生のクリニックの財務状況と将来の展望を深く理解した上で、第三者の専門的な視点から、最適な選択をサポートさせていただきます。