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その節税、意味ありますか?節税の仕組みについて解説!【医療法人編】
2025.10.03
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医療法人の院長先生は、日々の診療に加え、経営者として資金繰りやスタッフのマネジメントなど、多くの課題に直面されていることと思います。その中でも、「節税」は多くの先生方が関心を持つテーマではないでしょうか。
インターネットや書籍には様々な節税情報が溢れていますが、「本当に自院にとって効果があるのだろうか?」「かえって損をしてしまわないか?」と不安に感じることはありませんか?
今回のブログでは、私たち税理士法人の視点から、医療法人だからこそ考えたい「本当に意味のある節税」の仕組みと、よくある節税策の落とし穴について、分かりやすく解説していきます。
そもそも節税とは?基本の考え方
まず大前提として、節税は「脱税」とは全く異なります。脱税は違法行為ですが、節税は法律で認められた範囲内で、正しく税金の負担を軽減する行為です。
税金は、法人の利益(=課税所得)に対して課されます。つまり、節税の基本は、この「課税所得をいかにコントロールするか」という点に集約されます。
課税所得を減らす方法は、大きく分けて2つです。
- 損金(経費)を増やす
- 益金(収益)の計上を繰り延べる
多くの節税策は、このいずれか、または両方を組み合わせたものになります。しかし、ここで注意したいのが、「キャッシュを失う節税」と「キャッシュを残す節税」の違いです。
例えば、利益が出たからといって慌てて不要な車や高額な医療機器を購入するのは「キャッシュを失う節税」の典型例です。経費は増えて税金は減りますが、それ以上に手元の現金が大きく減少してしまいます。本当に意味のある節税とは、法人のキャッシュフローを健全に保ち、将来の成長につなげるためのものでなくてはなりません。
よくある節税策とその落とし穴
巷でよく紹介される節税策には、メリットだけでなく注意すべき「落とし穴」もあります。いくつか代表的なものを見ていきましょう。
1. 役員報酬の最適化
役員報酬を増やすと法人の経費(損金)が増え、法人税を減らすことができます。しかし、院長先生個人の所得税・住民税や社会保険料の負担が増加します。法人と個人のトータルで最適なバランスを見極めることが重要です。また、役員報酬は原則として事業年度の途中で変更できない(定期同額給与)というルールも忘れてはいけません。
2. 生命保険の活用
全額損金として計上できる保険商品は、一見すると魅力的に映ります。しかし、解約時に受け取る返戻金は法人の収益(益金)となり、大きな課税対象となり、また税制改正に伴い、全額損金計上できる生命保険は解約返戻金が少ない保険に限られます。生命保険の設計内容などによれば、払い損する可能性も高いため、生命保険に加入する場合は、商品内容を正確に把握する必要があります。
3. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
掛金が全額損金になり、最大800万円まで積み立てられるため、人気の高い制度です。しかし、これも生命保険と同様、解約手当金は全額が益金になり、利益の繰り延べに過ぎないため、解約するタイミングで大きな費用が発生する見込みがないと、節税効果は薄れてしまいます。
4. 高額な医療機器の購入
最新の医療機器への投資は、診療の質を高め、増収につながる可能性のある有意義な支出です。減価償却によって数年間にわたり経費計上もできます。しかし、「節税のため」という目的が先行し、過剰なスペックの機器や不要な機器を導入してしまうと、キャッシュフローを圧迫するだけの結果になりかねません。
本当に意味のある節税とは?
目先の税金を減らす「課税の繰り延べ」だけを追いかけるのではなく、法人にお金を残し、事業の成長や院長先生ご自身の将来に繋げることが本質的な節税です。
☑長期的な視点で「役員退職金」を準備する
医療法人の節税において、最も効果的で重要な戦略の一つが役員退職金の準備です。
院長先生が退職する際に支払われる退職金は、法人にとっては大きな損金となります。受け取る個人にとっても、「退職所得控除」や分離課税、2分の1課税など非常に有利な税制上の優遇措置が適用されるため、役員報酬として受け取るよりも手取り額が大きく増えるケースがほとんどです。
倒産防止共済やオペレーティングリースなどを活用し、計画的に退職慰労金規程を整備した上で準備を進めることで、将来の大きな節税と、院長先生への確実な資産移転を実現できます。
☑将来の収益につながる「設備投資」を行う
「落とし穴」の項でも触れましたが、将来の増収や業務効率化に直結する設備投資は、最も健全で理想的な節税と言えます。
- より高度な医療を提供できる最新機器の導入
- 電子カルテシステムの更新による業務効率化
- 患者さんの満足度を高めるための内装リフォーム
これらは減価償却によって税負担を軽減しつつ、クリニックの競争力を高め、将来のキャッシュフローを豊かにする「生きたお金の使い方」です。
☑MS法人(メディカル・サービス法人)の活用
MS法人を設立し、医療法人から経理業務や清掃、不動産管理などを委託することで、所得を分散し、法人全体の税負担を軽減する方法もあります。ただし、取引の実態が伴っていないと税務調査で指摘されるリスクも高いため、導入には慎重な検討と専門家のアドバイスが不可欠です。
まとめ:節税は経営戦略そのもの
ここまで見てきたように、節税には様々な手法がありますが、大切なのは「何のために税金を抑えたいのか?」という目的を明確にすることです。
- 将来の退職金として、自分や家族のために資産を残したいのか?
- 最新の医療を提供できる体制を整え、地域医療に貢献したいのか?
- 手元資金を厚くし、安定したクリニック経営を実現したいのか?
目先のテクニックに飛びつくのではなく、自院の将来像(ビジョン)を描いた上で、長期的な視点に立った最適な節税策を選択することが、経営者として最も重要な判断となります。
私ども会計事務所では、各医療法人様の状況や院長先生のお考えを丁寧にお伺いした上で、オーダーメイドの節税プランニング、そしてその先の事業成長までをサポートさせていただいております。
「自院にとってのベストな選択肢を知りたい」「今の節税策が正しいのか診断してほしい」など、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。