【税理士が判定】これは経費?個人開業医が迷うグレーゾーン経費を徹底解説(個人開業医編)

2025.10.03

クリニックを開業された個人事業主の院長先生にとって、日々の診療と並行して行う経理業務は悩みの種の一つではないでしょうか。特に頭を悩ませるのが、「この支出は経費になるのか?」という判断です。

経費を正しく計上できれば節税に繋がりますが、税務調査で否認されてしまうと、追徴課税という思わぬペナルティが発生するリスクもあります。

そこで本記事では、多くの院長先生が判断に迷いがちな「グレーゾーン」の経費について、税理士の視点から経費に「なる」「ならない」の判断基準を具体的なケーススタディを交えて徹底解説します。

個人開業医における経費の基本原則

まず大前提として、経費として認められるためには「クリニックの収益(医業収入)を得るために直接的に必要な費用である」という「事業との直接関連性」を客観的に証明する必要があります。

この原則を踏まえ、税務調査で指摘されないためには、以下の2点が重要になります。

  1. 事業との直接関連性を合理的に説明できるか
  2. 支出を証明する客観的な証拠(領収書、契約書など)があるか

この2つのポイントを念頭に、具体的なグレーゾーン経費を見ていきましょう。

【ケース別】グレーゾーン経費を徹底解説!

ケース1:学会・医師会の会費や参加費

項目経費判断解説
医師会・学会の年会費なるクリニックの事業運営上、情報収集や関係構築に不可欠な費用であり、問題なく経費として認められます。
学会参加費・交通費・宿泊費なる最新の医療知識や技術を習得するための学会参加は、診療に直結するため、参加費やそれに伴う交通費、宿泊費も経費となります。
学会参加時の懇親会費なる他の医師との情報交換の場として事業と直接的な関連性が認められるため、一般的に経費(交際費)として処理できます。
観光を兼ねた学会出張按分が必要学会への参加が主目的であれば、業務に必要な日数分の交通費・宿泊費は経費になります。しかし、前後で観光をされた場合、その部分はプライベートな支出と見なされるため、按分が必要です。例えば、2日間の学会の前後に2日間観光した場合、旅費交通費や宿泊費の約半分を経費として計上するのが合理的です。
大学の同窓会費×ならない大学の同窓会費は、例えば、医学部、歯学部同士の集まりであっても、事業との直接的な関連性が認められにくいため、経費として認められないです。

【ポイント】 出張報告書を作成し、学会のスケジュールや面談した相手、得られた知見などを記録しておくことで、事業関連性の証明がより確実になります。

ケース2:交際費・福利厚生費

項目経費判断解説
地域の開業医との情報交換のための食事会なる病診連携や地域医療の発展に繋がる情報交換は、事業運営に必要な活動です。交際費として経費計上できます。
従業員との慰安旅行なる(条件あり)従業員を雇用している場合、全従業員を対象とし、社会通念上一般的な金額の範囲内であれば、福利厚生費として経費になります。院長先生ご自身やご家族のみの旅行は、経費として認められません。
家族との食事代× ならない原則として、生計を同一にする家族との食事代は家事費(プライベートな支出)とされ、経費にはなりません。ただし、後述する青色事業専従者であるご家族と、明確な事業目的(事業計画の打ち合わせなど)で食事をした場合は、会議費として認められる可能性もあります。その際は、議事録などを残しておきましょう。
取引先へのお中元・お歳暮なる地域の連携医療機関や製薬会社、医療機器メーカーなど、事業に関連する相手先へのお中元やお歳暮は、交際費として経費になります。
お客さんとの飲食代○なる診療しているお客さんや提携しているお客さんとの飲食代は、直接業務と関係するため、交際費として経費になります。
見込み客との飲食代×ならない個人事業主の場合、業務上直接取引のない人との飲食代は、事業と直接関連がないため、経費になりません。
異業種団体の会費×ならない個人事業主の場合、青年会議所やロータリークラブなどの会費は、業務上直接関係がなく、事業と直接県連がないため、経費になりません。

【ポイント】 交際費は税務調査でチェックされやすい項目です。領収書の裏に「〇〇病院 △△先生と連携について協議」など、目的と相手先をメモしておく習慣をつけましょう。

ケース3:車両関連費(自家用車を業務利用)

往診や研修会への参加、医薬品の買い出しなどで自家用車を利用する場合、その費用は経費にできます。ただし、通勤やプライベートでも使用している場合は、家事按分が必要です。

  • 対象となる費用: 車両の減価償却費、自動車税、保険料、ガソリン代、駐車場代など
  • 合理的な按分基準:
    • 走行距離: 「業務での走行距離 ÷ 総走行距離」で按分する方法が最も客観的で合理的です。日々の業務日誌などに走行記録を残しておきましょう。
    • 使用日数: 「業務で使用した日数 ÷ 7日」などで按分する方法もあります。

例えば、年間走行距離が10,000kmで、そのうち往診など業務で使用した距離が3,000kmであれば、車両関連費の30%を経費として計上します。

ケース4:自宅兼クリニックの家賃・光熱費

自宅の一部をクリニックとして使用している場合も、家賃や水道光熱費、固定資産税、住宅ローンの金利部分などを家事按分して経費に計上できます。

  • 合理的な按分基準:
    • 面積: 「事業で使用している面積 ÷ 全体の面積」で按分するのが一般的です。

合理的な根拠を持って按分比率を決定し、その計算根拠を資料として保管しておくことが重要です。

ケース5:スマートフォンの本体代や通信料

業務で使用しているスマートフォンの本体代や通信料も業務で使用している部分とプライベートで使用している部分を家事按分して経費に計上できます。

  • 合理的な按分基準:
    • 使用量: 「事業で使用している使用量 ÷ 全体の使用量」で按分するのが一般的です。

合理的な根拠を持って按分比率を決定し、その計算根拠を資料として保管しておくことが重要です。

ケース6:ご家族への給与(青色事業専従者給与)

同一生計の配偶者やお子様がクリニックの業務(受付、経理、清掃など)を手伝っている場合、青色申告をしていることを前提に、一定の要件を満たせば、支払った給与を全額経費にできます。

  • 青色事業専従者給与の主な要件:
    1. 事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出していること。
    2. その年を通じて6ヶ月を超える期間、その事業に専ら従事していること。
    3. 労務の対価として相当な金額であること。

勤務実態に見合わない高額な給与は、否認されるリスクがあります。タイムカードや業務日報などで、勤務実態を客観的に記録しておくことが不可欠です。

ケース6:スーツ・白衣・クリーニング代

項目経費判断解説
白衣・スクラブなる診療時にのみ着用する白衣やスクラブは、明らかに業務用であるため、購入費用は全額経費になります。
スーツ× 原則ならないスーツは、学会での発表など特定の業務目的で購入したことを証明できれば経費として認められる可能性はありますが、一般的には通勤やプライベートでも着用できるため、家事費と見なされることがほとんどです。
白衣のクリーニング代なる業務で着用する白衣の維持管理費用として、クリーニング代は経費として認められます。

まとめ:判断に迷ったら、まず税理士にご相談を

個人開業医の経費判断におけるグレーゾーンは、「その支出が、第三者から見ても事業のためだと客観的・合理的に説明できるか」が最大のポイントです。

  • 領収書や記録をしっかり残す
  • 家事按分は合理的な基準で行う
  • 事業とプライベートの区別を明確にする(公私混同を避ける)

これらの意識を持つだけでも、税務リスクは大きく軽減できます。

しかし、法律や通達は複雑で、解釈が難しいケースも少なくありません。ご自身の判断で経費計上した結果、将来の税務調査で指摘を受ける事態は避けたいものです。

「これは経費になるのかな?」と少しでも迷われたら、安易に判断せず、私たちのような医療業界に詳しい税理士にぜひ一度ご相談ください。適切な会計処理と税務戦略で、院長先生が安心して診療に専念できる環境づくりをサポートいたします。